Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

語られない物語その・・・3桁めぐらいの6

 
 「はぁい、・・・でもお願いがあるの?」
 「なんだ?」
 「あなたの腕でいいわ、一噛みさせて?」
と言うが早いか、あざみは男の鎧から露出している二の腕にかぷりついた。
まだ牙は立ててない。
男も「あっ! てめぇ、こんにゃろ!」と思ったが、口には出さない。
とりあえず、無言であざみの好きにさせた・・・。
あざみも、本来なら男の唇に噛み付きたかったのだが、その先を自制する自信はない。
そのうち男は腕に鋭い痛みを覚える・・・。

 噛み付かれたのだ・・・。

だが・・・激痛というほどでもない。
血がどのくらい流れているかはわからないが、
男にとっては騒ぐことではなかった。
あざみは、まるで母親の乳房にすがりつく赤子のように、男の腕にしゃぶりついている。
その姿を見て、男は拒絶する気が失せていたのである。

 「おいしかったわ・・・ごちそう様。
 お時間をとらせてごめんなさい?」
ヘンな所で礼儀正しいヤツだ。
だが、それよりも、男は噛まれていた腕を見た・・・。
赤く腫れ上がっている。
・・・牙の跡も赤く生々しく残っているが、血は・・・
多分止まるまで舐め続けられたのだろう、出血は止まっていた。

この時、今頃になって、ふっと男の脳に恐ろしい考えが浮かんだ。
 「いいけど・・・お前吸血鬼じゃねーだろうなぁ、
 ・・・まさか感染なんて・・・。」