Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ54

 
 案内人は、そんなことは気にしてないようで、
笑ってランディの質問を受け流す。
どうやら、今、宮廷の人間はみんなハイになってるようだ。
少々の無礼講は許されるらしい。
 ・・・だが、
ランディはそんな気分にはなれない・・・。
いまだ、自分がこうやってのうのうと生きている事が信じられないのだ。
忘れるつもりだったロゼッタの死に様・・・、
 結局、彼女の死に顔は、目に焼き付ける事さえもできなかった・・・。
 きっと、恐怖と絶望で、苦悶の表情を浮かべていたに違いない・・・、
 それが怖くて、胸元に刺さった槍と、
 ただの肉の塊と化してしまったその胸より下しか、自分の視界に収める事ができなかったのだ・・・。
 そしてディジーの自分を呼ぶ最後の叫び声・・・、
 ローリエの無言の抗議・・・。
目を瞑れば生々しく、その光景が思い出される・・・。
確かに生き死にの戦闘時や、他の事に集中できるのなら、
しばし忘れている事もできるのだが・・・。

そうこうしている内に、お召しの時間がやってきた。
案内されるまま、ランディは重い鎧のまま、
ゆっくり、一歩ずつ王宮の大広間の入り口をくぐった・・・。

 パチパチパチパチ・・・!
溢れんばかりの拍手と歓声・・・。
自分の前を先導役の男が歩いているので、立ち止まる位置は心配しなくていい。
赤い絨毯が敷き詰められたその道の両側に、
アルヒズリきっての重臣や貴族達が並んでいる。
そして先導役の男の先に・・・、
豪勢な玉座に座った老王・・・エア王の姿が目に入った・・・!
先導役は振り返り、ランディに一礼をとると、
赤い絨毯の道を引き返す。

いま、ランディは「神に愛された王」エアの前に直面したのである。