死の神タナトスと、解き放たれた「魔」37
その間ハデスは目を伏せ、
自らの意識に、強制的に流し込まれる膨大な光景を観続けていた。
通常の人間では、
モイラから送られてくるデータをまともに読み取ることもできなければ、
受け取ったとして、圧倒的なスピードで送られてくるその莫大な情報量で、
精神構造に損傷が発生する危険もある。
オリオン神群ハデスだからこそ、この儀式は成立するのだ。
・・・そして、
モイラは役目を果たし終えた・・・。
ハデスの頭から両手を離すと、
立ちくらみでも覚えたのか、ヨロヨロ倒れそうになる・・・。
すぐにその背中と腕を、「神の女奴隷」が支えにまわる。
しかし、モイラはあくまでも自分の役目に忠実だ・・・。
「ハ、ハデス様・・・、
うまく伝わりましたでしょうか?」
ヘルメスは固唾を呑んで見守っている・・・。
刺激の少ないこの地底世界で、
未だ自分が見たこともない儀式を目の当たりにして興奮しているようだ。
そして、
満を持して・・・ハデスが両目を見開いた!
「うむ、・・・視えた、ぞ・・・。
緒沢タケルの過去を・・・、そして彼を常に見守っていた”目”を!」
ハデスはゆっくり立ち上がり、テーブルにあるワイングラスの位置を調整した・・・。
そして、
彼はそのワイングラスの両側から、3センチほどの距離を離しつつも、
両手で支えるかのような仕草を取ったのである・・・。
ゼウスがその光景を見ながらボソリ呟く・・・。
「・・・滅多には見られないぞ、ヘルメス・・・。」
呼ばれたヘルメスは視線をワイングラスに注いだまま、ゼウスに答える。
「えっ、これって、ワインかグラスが必要な能力なのかい?」
それには未だ余裕なのか、術を開始しているハデスが笑みを浮かべて回答した。
「・・・いいや、私の能力そのものに小道具は要らない。
ただ、これから呼びだす者に『どこまでが境界』なのか、認識させるため必要なのだ。
さっきもいったろう? 『それ』は弱々しくか細いモノなのだ、
息を吹きかけただけで飛び散ってしまうかもしれないのだよ・・・。」
しかし、モイラはあくまでも自分の役目に忠実だ・・・。
「ハ、ハデス様・・・、
うまく伝わりましたでしょうか?」
ヘルメスは固唾を呑んで見守っている・・・。
刺激の少ないこの地底世界で、
未だ自分が見たこともない儀式を目の当たりにして興奮しているようだ。
そして、
満を持して・・・ハデスが両目を見開いた!
「うむ、・・・視えた、ぞ・・・。
緒沢タケルの過去を・・・、そして彼を常に見守っていた”目”を!」
ハデスはゆっくり立ち上がり、テーブルにあるワイングラスの位置を調整した・・・。
そして、
彼はそのワイングラスの両側から、3センチほどの距離を離しつつも、
両手で支えるかのような仕草を取ったのである・・・。
ゼウスがその光景を見ながらボソリ呟く・・・。
「・・・滅多には見られないぞ、ヘルメス・・・。」
呼ばれたヘルメスは視線をワイングラスに注いだまま、ゼウスに答える。
「えっ、これって、ワインかグラスが必要な能力なのかい?」
それには未だ余裕なのか、術を開始しているハデスが笑みを浮かべて回答した。
「・・・いいや、私の能力そのものに小道具は要らない。
ただ、これから呼びだす者に『どこまでが境界』なのか、認識させるため必要なのだ。
さっきもいったろう? 『それ』は弱々しくか細いモノなのだ、
息を吹きかけただけで飛び散ってしまうかもしれないのだよ・・・。」