Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ゼウス対ポセイドン 13

 
みんなの視線はサルペドンに向けられる。
タケルやミィナ、マリアに酒田・・・、
彼らは皆、サルペドンが戦闘の最前線に就く姿を初めて見るばかりか、
相手は敵の首魁、ゼウスときて、
誰もがサルペドンの勝利する姿を想像できなかったのだ。
まだ傷だらけとは言え、タケルが出て行ったほうが勝ち目があるのでは?
ほぼ全員がそんな考えに陥っていたのだ。
そんな不安を吹き飛ばす為に、
サルペドンはあらかじめ考えていた段取りを実行する。
 「クリシュナ、グログロンガ・・・!
 頼んでいたものを・・・。」
二人の幹部が呼ばれて持ってきたもの・・・、
それは絶縁素材を組み込んだサンダルと手袋・・・、
そして2本の槍だ。
重量を軽減するため、柄の部分は木製だが、
穂先と石突の部分を金属でしつらえてある。
これはもしや・・・。
 「そう、ヘファイストスやハデスと一緒だ。
 ゼウスの雷撃を防ぐ為にな・・・。」
なるほど、天叢雲剣の弱点を暴かれたのを、逆に利用しようというわけか。
それはいいのだが、タケルは同じ雷撃系の使い手として、計り知れない不安に襲われる・・・。
 こんなもの・・・、オレ以上の威力を持っているっつうゼウスを相手に通じるのか?
 気休め程度にしかならないんじゃ・・・。
不安げなタケルの視線をサルペドンは気づいたようだ。
タケルに近づいたかと思うと、
他の誰にも聞こえないような小さな声で、タケルの耳もとでポツリとつぶやいたのだ。
 「・・・黙っていてくれよ、
 これは長い間、お前たちを欺き続けた償いでもある。
 それでも・・・お前たちだけは無事に地上に帰してみせるからな・・・!」
 「サルペドン、おい・・!」
そのままサルペドンは、タケルの呼び止める声に足を止めもせず、
ゆっくりと、硬い意志の元、一歩ずつ、決戦の地に向けて歩み始めたのだ・・・。