Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

Lady メリーと異教の騎士30

 
 ハロルドにとっては、料金の算出なんかどうでもいい。
学校やモーリン宅の所在地から交通費の概算、日当、
あと・・・プラスα・・・適当に、依頼者の経済状況を加味して丼勘定だ。
まぁ、そんなもんでいいだろう。
一応、業務としてパソコンのキーボードを叩いて、
所定のフォーマットに金額を打ち込んでいく・・・。
 「・・・場所はニューヨークっつっても、ほぼマサチューセッツの方か・・・。
 ん、そういやぁ・・・。」
彼はふとしたことを思い出し、
パソコンからデータを検索する・・・。

 ”Lizzie Borden”
 ・・・マサチューセッツ、フォールリバー・・・、
 1860年7月16日生まれ・・・1927年6月1日没・・・

検索されたデータを読み上げながら、タバコに火を灯す・・・。
 「・・・やっぱ、実在の人物だったか・・・、
 それより、マサチューセッツ? 偶然なのか?」
そこにある各種のデータをハロルドは頭に叩き込んでいく・・・。
 父親と再婚した継母の頭を斧で執拗に叩きつけて惨殺した異常な女性・・・。
 しかも、裁判では証拠不十分のため不起訴・・・。
マザーグースの歌自体は聞いたことはあるが、その背景を知るのは初めてだ。
検索したサイトには、父親アンドリュー・ボーデンや継母アビー・ボーデンの死体写真まである。
・・・そのうち、先ほどモーリンが書いた資料にも目をやると、
さらにハロルドは眉を吊り上げる。
方角は確かに一緒だが、フォールリバーは、はるか先だ。
 「・・・近いっちゃ近い・・・、遠いっちゃあ遠い。
 はぁ、同時進行で調査するか・・・。」
彼はタバコの火を消すと、トレンチコートをはおり、古臭いが渋めの帽子をかぶった。
決断すると彼は素早い。
踊りでも踊るかのようにリズムに乗って、
事務所を飛び出した。