Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス44

 
サルペドンはヘファイストスの反論を待たずに畳み掛ける。
 「私は短い時間だが、
 この世界の様々な人間に会ってきたぞ?
 トモロスやアレスの尊大な態度、
 心優しきアテナやデメテル・・・、
 陽気なデュオニュソスや、高慢ちきなヘルメスにアルテミス・・・、
 彼らは全て、外の世界と大差ない、どこにでもいるような只の人間だ!
 巨大な精神エネルギーと寿命を持っている以外、地上の人間となんら変わりない!
 他人を守るために自らの命を賭ける者や、
 使命感に捉われ、周りが見えなくなる者、
 ヘファイストス殿!
 もう一度、戦いに入る前に考えてはいただけないか!?
 過去に不幸があったとしても、
 それを未来の人間たちに負わす必要はないはずだ!
 これ以上、さらに多くの悲劇を生みたいとでも言うのか!?
 お願いだ、ヘファイストス・・・!
 私たちは・・・分かり合えるはずなんだ・・・!!」

魂を込めたサルペドンの説得・・・。
その顔を・・・瞳をサングラスで隠しているとは言え、
彼の言葉の重みを疑えるものなどいないだろう・・・。
特に・・・ヘファイストスのような純粋なる心の持ち主に・・・。

やがて、ヘファイストスは視線を落としたかと思うと、
すぐに何も言えなくなってしまった。
これ以上は攻めるべきじゃない・・・。
自分がここいても、ヘファイストスには余計な圧力にしかならないだろう、
そう判断したサルペドンは一縷の望みを託して、
自陣へと舞い戻る。
後は・・・ヘファイストスの心・・・彼次第だ・・・。