Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ランディ プロローグ57

 
エアの言葉が続く・・・。
 「ランディよ、
 この余が、若き頃、そなたの祖父と交遊を暖めておったのは聞いておったのか?」
 「・・・は? ははっ、
 いえ、あの・・・聞いてはおりましたが・・・、
 その、私めが幼い頃には、すでに祖父は羊飼いの仕事を生業にしておりましたので、
 その、正直、祖父のホラ話かと・・・。」
今度は一斉に笑い声が起こった。
ランディの神妙な顔つきとのギャップが笑いを呼び起こしたようだ。
ヒゲで半分見えないが、エア王の顔もほころんでるように見える。
 「ほっほっほ・・・なるほど、
 そうであったか・・・。
 さて・・・皆の者よ・・・。
 古くからの家臣は知っていようが、
 ランディの家柄・・・彼の曽祖父までは宮廷きっての重職に就いておった。
 余が王位を就く前の時代、
 彼の曽祖父の指揮した戦において、守るべき都市が壊滅した。
 ・・・元々はその曽祖父の失敗でもなく、
 部下のミスが重なった物だったのだが・・・、
 その者は責任をとって、役職も地位も財産も投げ打って下野したのじゃ・・・。
 ・・・だが、今ここにその子孫が、
 存亡の危機に遭ったテルアハの街を救い、
 この宮廷に駆けつけてくれた・・・!
 その功績は、失った彼の先祖の栄誉と名声を回復させるに相応しい功績と言えないだろうか!?」
またもや宮廷に拍手と歓声が沸きあがる。
これは・・・ランディがいきなり、先祖同様の身分を与えられるという事なのだろうか?
この場にあってただ一人、ランディだけが狼狽する。
 なんで、こんなとんとん拍子に話が進んでいくのだ!?
 こんな簡単に自分は喜んで良いのだろうか?

勿論、エア王にとっては、ランディの内心などどうでもいいし、
ランディを喜ばせるためだけに、こんな賞賛を与えているわけでもない。
それは、重臣達も知らぬ事なれど、
これよりエア王自ら話す、さらに重大な未来への伏線でもあったのだ・・・。