Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

ヘファイストスの葛藤・語り継ぐネレウス53

 
 「ああっ!?」
驚愕の叫びをあげたのはマリアたち、
ヘファイストスとタケルが交錯した時、槍をかわすのには成功したものの、
戦車の突進までは避けられなかったのだ。
車体の一部に足をぶつけたのか、
あまりの激痛にヨロヨロと膝を抱えて、その場から逃れようとするタケル。
だが、手ごたえを感じたヘファイストスはすぐに方向を転換、
今度は左手の炎を最大限に燃え上がらせ、
まるで生き物のように赤い炎は踊り狂う。
 「消し炭になぁれぇ~!!」
冗談じゃないっ!
だが、しばらく右の膝が言うことを聞かない。
火柱の恐ろしい点は、天叢雲剣で避けることができない点だ。
しかも、ある程度限界はあるのだろうが、炎の大きさは伸縮自在のようである。
みっともなく、地面を転がりながら辛うじてヘファイストスの攻撃をかわすが、
うまく逃げないとまた追い詰められてしまう。

どうすれば・・・。
ギリギリまで接近を待ち、一か八かで天叢雲剣を?
だが下手したら、電撃は全部、奴の腕の槍に吸収されちまうんじゃ・・・。
 「あうっ!」
今度も火柱を避けようとしたが、紅蓮の炎がタケルの足首を焦がす。
そうかと思うと、次は縦横無尽の槍さばきで、タケルのカラダが赤い血に染まっていく。

 「サルペドン!」
マリアが続く「どうにかならないの?」という言葉を吐き出す以前に、
サルペドンも自らの見識の甘さに後悔した。
 「まさか、ここまで・・・。」
元来、ヘファイストスは戦士タイプではない。
鍛冶で培った豪力と、長時間汗をかいても仕事を続行できる体力、
そして、時々自由な発想でアイデアを紡ぎだす、閃き・・・、
それらがヘファイストスの真骨頂と言える。
だが、今や、それらがうまく絡み合い、
これまで敵無しの実力を誇ってきたタケルを追い詰め始めたのだ。