・四人の使徒「朱武」
帰り道、林沖に車で送られた後、朱武と李袞は道場に戻っていた。 「どう思う、朱武、あの宋大人を・・・。」 「どうって・・・まぁたいしたもんだよ、 初めて会ったこのオレにあんなことを言い出すなんて、 よっぽどのバカか器が大きいのか、それともその場…
「・・・なるほど、よくわかったよ、朱武君・・・!」 宋公明は、完全に厳しい威厳のある表情に戻っている。 恐らくこっちが本当の顔なのだろう。 「ではこうしよう・・・私が君のバックアップ・・・後見役となろう、 君にその・・・徴とやらか? それが訪れ…
一方、師の李袞はしばらく考えていたようだが、隣の朱武に目を合わせてから宋公明に向かった。 「実を言いますと、宋大人・・・、 朱武は・・・この子には、 私以外にもう一人、武術の師と言える者がおりましてな・・・。」 「ほう、それは初耳ですな、それ…
宋公明は片手をあげて制止する。 「いえ、今回その件は、あなたがたをお招きするに当たり、 全く想定しておりませんでした。 ただ、私もここ数年、その・・・夢の話ですよね? 同じ内容の夢を繰り返して見てしまうので、 各方面に、その内容が意味することを…
「朱武君・・・李袞師範・・・今の話は本当かね? 話しぶりからすると、武の世界で名を上げたキミへのやっかみとかではなさそうだな・・・。」 朱武は少し間をおいて、頭を下げながら説明する。 「すいません、 正直、宋大人、あなたも信用できるかどうかオ…
とりあえず、テーブルやら椅子やら、場を片づけてから、 宋公明は、相変わらず目は笑わないまま、 一人高笑いを続けながら、話を続ける。 本当に今日は愉快なのだろう。 「まぁ、今日は本当に、飲んで食べて帰ってもらって構わないから、 今後もよろしく頼む…
そして目ん玉をまん丸にして、開いた口がふさがらないのが宋公明と林沖だ。 無理もない、 いくら強いとは知っていても、 朱武の身長は170前後、 体重は70kgにも満たないはずだ・・・。 ましてやまだ彼はたったの15歳・・・。 それを・・・2倍近い体…
あっという間に吊りあげられる朱武・・・、 部下の暴走に宋公明と林沖は慌てるが、当の朱武は涼しい顔だ。 「放せよ、牛・・・。」 その瞬間、朱武の指先が、掴みあげる李鉄の内肘にめり込む!! 李鉄の、分厚い筋肉やら脂肪やらは全く用をなさずに、 朱武の…
そこへ、宋公明の後ろに控えていた林沖が、笑いながら間に入ってきた。 「そんな難しく考えなくていいですよ、 宋先生は拳法家や格闘技に目がないんです。 この屋敷にはそんな人間が大勢集められていますけどね?」 宋公明はそれに合わせて笑っている。 「い…
慌てて宋公明は顔の前で手を振る。 「あああ、いやいや、そんな気遣いまで! いえ、実は・・・お願いがありましてな。」 「はて? 我々に、ですか?」 「ええ、特に朱武君にとっては良い話かと・・・。」 朱武は指を自分の顔に向ける。 「えっ? オレに?」 …
そろそろ質問も細かくなり、宋公明も遠慮を覚えたのだろう、 多少、申し訳なさそうに李袞たちに突っ込んだ。 「あー、それで、大変失礼だが・・・、 朱武君たち・・・妹さんもだが・・・、 アレなのかな・・・、親御さんはどこの誰かとかは・・・。」 中国で…
宋公明のハイテンションは続く。 「それで、李袞先生! あなたの拳法家としての実力は、かねてから聞き及んでおりますがが、 この朱武君はどうですか? 師範の貴方の目から見て?」 「フム・・・、本人の目の前で言いたくはありませんが、 資質は私を越えま…
やがてその宋公明がやってきた。 先ほどと同じく、林沖という名の礼儀正しい男と、 李鉄という柄の悪い巨漢も一緒だ。 ・・・宋公明は想像より遥かに小柄だった。 身長165弱と言ったところか、 体格も、役人にありがちな肥満系ではあらず、 その頬にもた…
「・・・なぁにジロジロみてやがんだぁ・・・!?」 バックミラー越しに、その人相の悪い男がインネンふっかけてきた。 すぐさま運転席の男がたしなめる。 「李鉄! 失礼だぞ!」 「何言ってんだよ、林沖兄貴ぃ! こいつらのほうが・・・!」 「黙れ! お前…
朱武が若者らしく、戸惑い気味に来客者に向かって頭を下げると、 その男も礼儀正しく微笑を浮かべて礼を返す。 朱武がこの客の事を李袞から聞き出そうとする前に、 男はすぐに李袞と会話を始めた。 「李袞様、 こちらの少年が朱武君ですか? なるほど、精悍…
「朱武さん、お帰りなさい! 先生がお部屋でお待ちですよ!」 「りょーかぁい! すぐ行くぅ!!」 かつて・・・その強さと名を轟かせた山東の虎・李袞は、 その拳の戦いで大怪我を負って以来、 若い子供たちの育成を目的に、この道場で多くの門下生を指導す…
苦しみまくる朱武を、腕組みして偉そうに見下す少女、梨香。 「そりゃあ、史上最高かつ全世界最強をのたまう朱武お兄ちゃんの妹ですから? それより、李袞先生が早く呼び戻せってカンカンだよ? 早く帰んなきゃ!」 二人は骨格はまるで違うが、目元は似てい…
中国山東省のある一都市・・・。 そこそこ人口も多く、最近は産業も発達し、高層ビルも増えてきたこの街・・・。 だが、主要道路の裏側にいくと、 前近代的な面持ちの古臭い家やビルがいくつも建っている。 たまに道沿いに、屋台やビリヤード台が置かれ、 ヒ…