第二十六話
・・・先日のいざこざから、
エリナはこの朝田と言う少年に対し、必要以上に警戒している。
「私の方は、あなたに特段、用はないのですけれど・・・。」
「つれないよ~、オレは君の事をよく知りたいんだよ~、
君だって日本の事を勉強するために来てるんだろ?
なら、オレがいろいろ教えてあげるって!」
エリナが嫌がっているのは誰の目にも明らかだ。
恐怖に対するネジが一本緩い、加藤恵子がエリナをかばう。
「ちょっと! いい加減にしなさいよ、あなた!
いま、授業中よ! 第一、女の子誘うにしてももっとスマートにやりなさいよ!」
「うっるせぇな、クソブス!
多少、強引なのがオレのスタイルなんだよ、
お前には用ないんだからすっこんでろよ!」
そんな暴言を吐かれた加藤恵子も激怒するが、
さらにそれ以上、興奮したのが山本依子だ。
前回のやりとりをその目で見てないものの、
いま、この場で親友を侮辱され、彼女が黙っていられるわけもない。
「なぁにぃ、このウドぉぉ!! おめぇ何様だよぉ!!」
これはやばい!!
エリナがこの時思ったのは、加藤やヨリの身が危険だということ。
自分の事などどうでもいい。
ならどうしよう・・・、優一さんにお手数かけるわけにもいかないしぃ・・・!
「待ってください!」
朝田・加藤・ヨリの三人の動きが止まる。
エリナは加藤とヨリのカラダの間を縫って、朝田の前に立ちはだかった。
「おおお、こんな近くでエリナちゃーん!
そうだよ、こんな奴ら、ほっといてさぁ・・・。」
「朝田さんでしたっけ?
あなたは私をどうしたいのですか!?」
直球の質問に戸惑いつつも、この状況は朝田にとって嬉しいパターンだ。
「え、あ、どうしたいって・・・、イヤハハハ!
そりゃあ、君と仲良く二人っきりで・・・そうだなぁ、
お話したり、お出かけしたり、映画やショッピングなんてどう?」
「・・・それっていわゆるデートのお誘いですか?」