Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

第三十五話

 
こんなに注目されてもったいつけるのも柄じゃない。
優一は軽く準備運動を行うと、
足場を確認して、あっという間にその堅く重い鉄球を空に向かって打ち放った!!
 「・・・おっ!?」
 「おおおおっ!?」
 「お・お・お・お・おお!?」
ドッザッァン!!
 「じゅ・・・15メーター65ぉっ!?」
またもや朝田の記録を軽々と打ち破ったぁ!!
しかも満場の衆人の見守る中、その記録は堂々、二クラス内でトップの数字を樹立し、
朝田の野望は完全に砕け散ってしまう!
 「「きゃああああっ!!」」
加藤のみに留まらず、いつの間にかヨリも大狂喜乱舞!!
エリナに至ってはついに泣き出してしまった!!
 「ゆ・・・優一さんっ!!」
加藤もヨリもエリナを抱きしめて「良かったね、良かったねっ!」
と優しく言葉をかける・・・。
 「わ、わたし、優一さんが私のために? ・・・、い、いいえっ、
 それも嬉しいですけど・・・、
 そんなことより、ゆ、優一さんがぁ、
 優一さんがホントに優しいんだって、みんなに証明できて・・・
 それが、それがホントに・・・っ!」
そうだよねっ!ホントにホントだよね!!
加藤恵子も、なぜかエリナと同じ気持ちだった・・・。
斐山優一がこれまで示してきたその姿・・・それは本当の姿などではなく、
実は結構、いい奴かもしれない・・・。
そのわずかな想像が、真実であると徐々に明らかになりつつある・・・。
 しかもそう!
前から思っていたが、斐山君の顔つき美少年度は芸術クラス!!
おそらくこれからは・・・、
彼の過去を知らない女子連中からはアイドル並の人気が沸騰するに違いない。
だけど、その彼の本当の姿を知る人間は、
このエリナちゃんと・・・きっと自分だけ・・・。 
加藤恵子は、妄想を膨らませて自分の世界に入り込んでしまった。
まだそれが、優一に対する特殊な感情だとは自覚できないまま、
この高校、このクラス、この仲間たちと過ごせることにワクワクしながら、
高校生活を続けることになる。

さて、この校庭での騒ぎを、一部始終観察する目がここにあった。
・・・学校の三階にある図書室・・・。
そこから一人の男性職員が、斐山優一の起こした騒ぎを興味深く見つめていた・・・。
 「四人の使徒・・・あれが・・・『狼』・・・?」