Lady Merry の日記

Yahooブログから引っ越してきました。

月の天使 シリス

Ladyメリーの物語99(最終話)

天使、 人間の赤ん坊に精神を潜らせ、その意識の奥底で、ゆっくりと成長を遂げる。 まだ彼の精神は不安定で、能力も開花してはいない・・・。 ただ、その魂は、人間としての顕在意識や能力に、影響を与えてしまう・・・。 故に、こうして時々監視したり、 外…

Ladyメリーの物語97・98

・・・「少年」は夢を見ていた。 「やつら」が見せている光景ではない。 それとは違う・・・ 「人間」の誰かが、自分にメッセージを送っているのだ・・・。 これも昔から、いや、自分だけを対象にしたものではないのかもしれない。 ラジオ放送のように、 世…

Ladyメリーの物語95・96

その光景は、 誰にも気づかれず、誰にも見られず、誰にも認識されず行われた。 上空の彼方から、 人間の肉眼には不可知の光が降り注ぎ、 河川敷にいた、一人の少年の体を取り囲んでいった。 すると、抵抗すら出来ない少年の体はゆっくりと宙に舞い、 まるで…

Ladyメリーの物語93・94

得体の知れない生き物が、 寄ってたかって自分を取り囲むおぞましい光景。 狭い部屋・・・眩しすぎる光・・・。 自分と大して変わらない身長でありながら、異常に肥大した頭部と眼球を持つ生き物・・・。 『やつら』がまたやってきたのだ! ・・・今に自分は…

Ladyメリーの物語91・92

そして、斐山優一はスクーターを停め、 近くの河川敷の舗道で座り込んでいた。 動物達の咆哮も、町並みの停電も、分りきっていたことのように大して気にも留めず・・・。 彼の意識は、たった一つのことのみに向けられていた・・・。 雲の切れ間から時々覗く…

Ladyメリーの物語89・90

窓の下では、 千鳥足のサラリーマン二人組が、家の前を通りすぎていた。 ・・・ただの酔っ払い・・・。 そんな事はどうでもいいので、窓を閉め、姉に大停電の事態を告げようとする直前、 彼らの声だけが恵子に聞こえてきた。 「ぶっちょう~ぉ、・・・もう、…

Ladyメリーの物語87・88

・・・けれど、今夜はいつもと少し違うのは、 犬のエルが、まだ飽きずに吠え続けている。 結局、あの『人形』とかいうのに向かって吠えていたのであろうか? それなら、まだ近くにいるというの? そんなことを考えているうち、 突然、家の電気が消えた。 「…

Ladyメリーの物語85・86

「うん? それと?」 「今夜オレに会ったことは誰にも言うな・・・。 言ったらお前は二度と家族に会えなくなる。」 「・・・!」 やっぱり、こんなものか・・・。 落胆する加藤恵子をよそに、 斐山優一はバイクをターンさせ、見送る加藤恵子を一瞥もせず、そ…

Ladyメリーの物語83・84

「ありがと・・・送ってもらっちゃった・・・。」 悪い気はしなかった・・・。 相変わらず優一は無表情で、何を考えているのかわからないが、 客観的に見れば、美形の男の子に、夜、二人っきりで送ってもらうのは悪くない。 ・・・これで怖い男の子でなかっ…

Ladyメリーの物語81・82

そして・・・、 ついに恵子はその内の一つの質問を選んでみせた。 「・・・ねぇ、斐山君・・・。」 「あ?」 「あなたって・・・怖いものってないの? これだけのことが起きて・・・。」 しばらく彼は黙っていたが、 そのうち思い出したように、加藤恵子の問…

Ladyメリーの物語79・80

斐山は手馴れた動作でスクーターを走らせる。 「お前の家は!?」 「あ・・・、えと、河川整備場わかる!? あの裏手におっきなマンションあるでしょ!? その近く!!」 「わかった!」 バイクでならそう大して時間はかからない。 恐らく3、4分もかかるま…

Ladyメリーの物語77・78

「送ってく・・・後ろ乗れ。」 「えっ!?」 「世話になったからな、礼代わりだ・・・。」 「そっ、そんな、いいよぉ、大したことしてないし、 だ、第一、これ違反でしかも泥棒じゃ・・・!?」 「もう、このスクーターの持ち主はいない・・・、『あの人形』…

Ladyメリーの物語75・76

加藤恵子が最初の位置に戻ろうとする前に、珍しく斐山優一は大声で叫ぶ。 「そこにいろ! 今行く!!」 恵子はとりあえず、言われたとおりにバイクの前で大人しく待っていた。 ・・・迎えに行ってあげようと思ったのに・・・。 街灯の明かりが、ゆっくりと近…

Ladyメリーの物語73・74

強いて言えば、この地に生きる生命達の神経がやけに過敏になっている。 でもその原因は? 人形の身になった百合子には、そこから先の判断は不可能だった・・・。 リーリトの身のままであったなら、 恐らくその異常を「嫌悪」と表現したのかもしれない。 だが…

Ladyメリーの物語71・72

だが・・・、Lady メリーの・・・その意識体百合子には、 一つの違和感がぬぐえないままでいた。 「彼女」は考える。 あの少年は何者なのだろう? この人形の身に、抵抗したり攻撃しようとする者は過去にもいたが、 その動きを追って来れる者など・・・…

Ladyメリーの物語69・70

ようやく斐山は彼女に向き直り、何か言いたげな視線を送った。 「な、なに?」 「頼みが出来た・・・。」 「ええっ? またいきなり・・・あ、で、でも私ができることなら・・・。」 「ああ、・・・向こうに神社があるだろ? その入り口に黄色いスクーターが…

Ladyメリーの物語67・68

加藤恵子は言いたい事だけ言って、 あとは斐山の反応次第で、この場から立ち去ろうとするつもりだった。 どうせ、こいつは似たような事を言うだけだろう、もういいや・・・! だが、斐山優一は奇妙な態度を彼女に見せた・・・。 「動物達が気が立ってる・・…

Ladyメリーの物語65・66

いきなりそんな事を言われたって・・・。 「・・・なんでいつも、あなたは人をからかってばっかりな・・・ 」 途中で恵子は詰まってしまった。 自分の当初の目的を思い出したのだ。 「・・・そうだ、私がさっき見たのって・・・。」 「見た・・・!?」 「あ…

Ladyメリーの物語63・64

「ひ、斐山君、意地張ってどーすんのよっ! ケガしてんでしょう!? あなたがどんなに強くったって、ケガしたら回復するまでムチャしちゃダメよ!」 その言葉は正論ではあるが、 斐山にとってはどうでもいいことだ。 「そうじゃない・・・、お前のためだ・・…

Ladyメリーの物語61・62

「えっ・・・ ・・・ひっひひっひ・・・斐山君!?」・・・加藤恵子だ・・・。 「っ痛ッ・・・なんで、お前がここにいる?」 「な、なな、なんでって、ここ、私と飼ってる犬の散歩道だもの!? そんな事より大丈夫なの!? カラダは!?」 「問題ない・・・…

Ladyメリーの物語59・60

だが、・・・攻撃の気配はない・・・。 何も襲ってこない・・・。 あの化け物は・・・どこへ行ったんだ・・・? 近くには・・・女の通行人だけ・・・ 「きゃああああっ!?」 つい今しがたまで、夢でも見ているかのような非現実的な光景を繰り広げていたが、…

Ladyメリーの物語57・58

驚異的な反射神経で、斐山は警棒を死神の鎌に合わせたが、 アラベスク文様の鎌は、その警棒を破壊し、 なおかつ斐山優一のカラダを地面に向かって弾き飛ばした!! 激しい勢いで落下する斐山優一・・・。 優一が落下する軌跡の下には、遊歩道の街路樹がある…

Ladyメリーの物語55・56

ここまで興奮する出来事は何年ぶりだろう? 凄まじいスピードで二人は空中で交差する。 身長160センチそこらの斐山優一のパワーはたかが知れている。 だが、これまで街の間隙を縫って走ってきた勢いと、 上空からの落下、 これだけの加速を以って攻撃を行え…

Ladyメリーの物語53・54

そして、追われるメリーにしても、 このまま追跡されているわけにも行かない。 メリーは瞬時に、今自分が飛んでいる空間360度全方位を把握する。 自分が着地しようとするアパートの屋上に到着する寸前、 身を捻り、後ろの斐山優一へ迎撃態勢へと転換!! こ…

Ladyメリーの物語51・52

「彼女」の背後に追いすがる者・・・、 それは薄手のトレーナーを着た小柄な少年、斐山優一だった。 Lady メリーの後をピッタリというわけではないが、 驚異的な跳躍力とスピード、 そして、自分がどのルートを選べばいいかという判断を瞬時に行い、 民…

Ladyメリーの物語49・50

メリーは、そのままクルリと後ろを向くと、 一瞬、カラダを沈ませた後、 まるで飛び立つ小鳥のような仕草を見せた。 その一連の動作に違和感を覚えるものなど一人もいまい。 メリーは、その後、 しなやかな肢をバネのように弾ませ、 あっという間に上空へと…

Ladyメリーの物語47・48

斐山優一が初めて遭遇する無機物の生命体、Lady メリー! 振り下ろされた「彼女」の死神の鎌は、 なおもそれ自身生きているかのように、刃先を揺らしている・・・。 ・・・そう、Lady メリーの瞳は、 今や、この処刑シーンに居合わせる事となってしまっ…

Ladyメリーの物語45・46

血しぶきが飛んだ! いや! それだけではない・・・! 存在感のある「何か」の物体が宙を舞い、 ドスッという鈍い音と共に地面に転がる・・・。 さしもの斐山優一も一歩も動けない! 首すら動かせず、表情すら変えられずに、 ただ眼球の動きのみを許されて、…

Ladyメリーの物語43・44

「なんだっ・・! おめ・・・!?」 石橋達也の声は途中で詰まった。 それ以上、声を発する事は出来ない。 ここで、ようやく斐山優一は振り返った。 ・・・またか、一々相手にしなくても・・・ だが斐山優一すらも、突然の「その状況」を瞬時に理解するのは…

Ladyメリーの物語41・42

斐山優一には「恐怖」という感情はない。 寧ろ、突然の「かくれんぼ」に、心の中で密かにこの事態を楽しむ余裕がある。 最後に感じた気配のある場所にゆっくり向かう。 低い柵を越えて、茂みの中・・・。 パキッ・・・ 足が小枝を踏む・・・。 ゆっくり、ゆっ…